今年の全日本エンデューロ選主権第4戦では、驚くべきマシンが最高峰クラスIAで優勝しました。鈴木健二のモディファイした、WR250Rです。過去、ISDEにもチャレンジしたことのある鈴木健二×WR250Rの組み合わせですが、ある意味で今できる最高のエンデューロモディファイをほどこしたと言えるでしょう。最終回の今回は、和泉拓のインプレッション!(その1その2はコチラから)

和泉クラスのライダーが
モトクロッサーよりも!?

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「エンジンはスタンダードと比べて、出足からトルクが出ている感じがしました。中間域はモトクロッサーに比べれば薄いけど、ピークパワーは相当出てますね。相当速く感じる。後軸でもかなり数字出るんじゃないかな」と開口一番、和泉は言う。「ノーマルだと低中速が薄くて、上だけぐんぐん伸びていくようなフィーリングですが、これは全域が使えますね」と。
「ガツンと出てくるパワーではないので、オフキャンバーなんかで開けやすいんですよね。オンタイムエンデューロでタイムを出すには、こういうフィーリングがいいでしょう。このWRなら半クラッチは要りませんね。アクセルオフからじわじわ開けていくだけで、しっかりトラクションして加速します。下手すると…俺レベルのライダーでは、モトクロッサーより、もしかしたらいいタイムが出るかもしれない(HTDEファイナルクロスの牧場テスト)」との評価。全日本エンデューロ選手権でゼッケン10を背負うトップライダー、和泉の言である。
鈴木も続けて「雨が降っていて、スリッピーになっているテストなどでは、明らかにモトクロッサーよりも楽に速く走れますね。すごくコントロールしやすいですよ」と。「それに、本格的なエンデュランサーだと日本人には足が着かないことが多いから、それだけでもタイムを出しづらいと思いますね」と和泉。もっとも和泉の場合は、身長が190cmを超えているため、むしろ「ハイシートが欲しいですけどね」とも。
実際、相当なレベルのライダーでないと、レーサーでタイムを出すことは難しい。これは、幾度もダートスポーツ本誌のテストで立証されていることでもあるが、全日本エンデューロの最上位クラスでも、そういったことがあるのだ。

だいたい5kg減の車体は…

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「軽さは、正直わかりません。元々130kgくらいあって、軽量化で5kgくらいか…CRM250Rより少し重いくらいですかね。
まぁ、トレールとしては標準的。ここからは、カーボンとチタンで金をかけないと無理ですからね。ただ、排気系やフットペグあたりを軽くするだけで、日高くらいなら普通の人は全然楽しめるようになると思いますよ」と和泉は言う。
サスはどうだろうか。「バネレートはワンランク下げています。減衰も抜いていますね」と鈴木は言うが「特にフロントは落ち着いていて、聞かないと下げていることがわからないくらい」と和泉。鈴木は「低速のシムは積んでいて強くなってますよ。スタンダードだと、途中から強くなっていて、域ごとのつながりが悪い。ならしてやったイメージです」と言う。
和泉によれば「たぶんリンク比をいじれればいいんですよね。市販車は設計上どうしてもサスの移動量をリンクで稼ぐようにするので、立ってしまいがち(プログレッシブ性が強くなる)」とのこと。「昔のタミトンさんの車両は、ストロークを上げていたので、あれはすごく良かったですね」と鈴木。
結論からすれば、あくまでトレール。しかし、よりトレールの良さをさらに突き詰めて出してあげることで、全日本選手権で「勝ってもおかしくない」マシンに仕上がったのだった。

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