カブで24時間で1000キロ走るチャレンジを毎年行うなど、カブに関して昔から精力的な活動を行っている『水戸藩カブ』の阿久津 尚 さん 。

Profile 阿久津 尚 さん
水戸藩カブというチームの会長である阿久津さんは、1935年生まれの80歳。61年式のC105からカブにどっぷりハマります。茨城県の御前山村(ごぜんやまむら)に所有する施設、「星ふる里」には全国のカブ好きが集まることで有名
カブでできる楽しいこと これからも仕掛けます
水戸藩カブという、全国的にも有名な集まりの会長を務める阿久津さんが、1000キロチャレンジに挑戦したのは1991年のこと。今年で26年目となるそのチャレンジは、茨城を出発して24時間で1000キロを走り切るというもの。そんな阿久津さんは、16歳の頃からバイクに乗り始め、30歳を過ぎた頃からカブに乗り始めました。当時の日本はバブルに突入した時代で、見渡す限り大型バイクや高級バイクばかり。
「高性能な250・なども多くラインナップしていて、私たちはそちらに目が行き、カブの良さには全く気づいていなかったですねぇ」
阿久津さんも例外ではなく、ツーリングには大型バイク、通勤用にはカブ(ある施設から払い下げで譲ってもらったもの)、というように乗り分けていたそうです。その後、カブに乗っている阿久津さんを見た県庁の知り合いが、解体屋さんに出す予定だというC105を譲ってくれました。
「まさか今まで続くカブ遊びのきっかけになるとは、その時は思いもしなかったです(笑)。そしてその頃、”貧乏ごっこ“とか言って、ポンコツカブで茨城から東京へのツーリングへ行ったんです。それはバイク雑誌の編集部と、青山のウェルカムプラザの見学を兼ねて」
そのツーリングが雑誌の記事になったことで大反響を呼び、楽しい楽しいカブ遊びが始まります。 冒頭で書いた1000キロチャレンジは、愛車である1961年式のC105(55・)が生誕から30年を迎えたということを記念して、1991年にスタートしました。24時間以内に1000キロを走破するという単純ながら過酷なイベント。第一回目は、40時間かかってしまい、阿久津さんは大きな屈辱を味わいました。しかしその悔しさが、阿久津さんを燃え上がらせます。ふつふつと湧いてくる意欲とともに、毎年恒例になり人が人を呼び、どんどん参加者が増えました。
「一時は参加者が70人にもなった時期がありました。そうなってくると危険が伴って来て…。また、現行のカブだと、1000キロを簡単に突破できちゃうんですよね。『チャレンジ』が目的だから、心を鬼にしてOHCのエンジンカブは参加不可にしました。本当はみんなで走りたいんだけど、スピードが出るバイクは危ないですから」
そうしてチャレンジし続けること20年。ついに24時間を達成!! 長年かけて挑み続けてきた後の成功。感無量だったことでしょう。
「昨年はガソリンを9回給油し、トイレや水分補給はその時だけ。あとはコンビニで納豆巻きを食べたくらいです。でも全然疲れないですよ。カブだから1000キロ走れます。他のバイクだと無理かな」
何とまぁ、ストイックな…! 成功の裏側には並々ならぬ努力があったのでした。その他にも極寒ツーリングなど、常に面白いことを仕掛けてきた阿久津さん。
「50年以上経っているカブが、このように遊びに使われている凄さに感心しつつ、楽しんでいます」
お歳が80歳だと聞いたときには大変驚きましたが、阿久津さんのパワフルさに、逆に元気をいただいてしまったのでした。

息子さんがクリスマスにプレゼントしてくれた50周年記念モデルのカブもお持ちで、それでは70キロだけ走って保存しているそう。C105については「すべてのバランスが良く、このデザインを越えるこのはもう出ないんじゃないかな」とのこと