みんなでコースに走りに行ったり、レースやイベント行ったりして、楽しくダートバイクライフを送っておりますが。
やはり職業病なんでしょうか、チラチラとみなさんの使っている工具が気になったりします。

まぁ気になるといっても『へーこんな系統の工具が好きなんだ』とか『こんな工夫して楽しんでるんだ』とかそういった目線で見てるだけなので何か言ったりはしないのですが……。

むむむ!っと思わずアドバイスしてしまいたくなる場面ってのがあります。
それは適正なソケットの差し込み角を使ってない場合。
もっと言うとそのせいでメンテナンス自体が苦痛に見えてしまう場合ですね。
「あーもうちょっとこうすれば作業はもっと楽しくなるのになぁ」とか思っちゃうわけです。

──ってなわけで前回の
工具店エイビットのちょっとひと工具「ハチブンノサンで揃えて、シブイチに手を出す?」
の続きとなります、お付き合いくださいませ。

まず言っておきたいのが
『工具とは人間が楽をするために使う道具』
なわけです。

それなのに例えば、6mmの小さなネジのために3/8(9.5mm)のラチェットとソケットで回しにくそうに作業するとかナンセンスなわけですよ。
ではそういった場合、どんな工具がどんな風に揃っていると楽なのか。
今回はちょっとそんなお話をしてみたいと思います。

 

ちっちゃいラチェットを使いこなす ─シブイチ編─

前回も『基本的に3/8差し込みの工具を持っていればOK』と書きましたが、やっぱりそれって基本のお話でして少しでも楽するために使う工具なわけですから整備全般に使える工具だけではなく、ダートバイクで便利な工具も積極的に使っていきませんか?ってなお話です。

そしてダートバイクでオススメと言えば、やっぱ1/4差し込みの工具なんですね。
もちろん理論的な根拠もありまして、ダートバイクで多用されている8mmとか10mmのボルトナット。
特に多い8mmとかは3/8ラチェットで使うのには少し大きさを感じます。
そのためバイク整備では今でもT型レンチを好んで使う人が多いのですが、これをせっかくだからラチェットでカリカリと回して見ましょうってな感じです。

それでは実際8mmというソケットを使うにはどういう工具が適しているのか。

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それはこの図を見てもらうと分かりやすいですね。(各差し込み角が受け持つソケットサイズ表)
少し使いにくいと感じていた3/8差し込みだと真ん中よりもかなり小さなサイズだと分かりますよね。

逆に1/4差し込みはまさに8mmや10mmのボルトナットにど真ん中対応なんですね。

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1/4差し込みの工具は最大ソケットサイズこそ14mmと小さく、ラチェットも『ミニラチェット』とか呼ばれるくらい小さいので見た目はなんだかおもちゃっぽいのですが、キチンと使ってあげるとものすごい便利な工具です。

で、このシブイチ。

購入にあたりひとつだけ注意点があります。
それは大きめな差し込み角のラチェットならばホームセンターで安売りしているようなモノでもほとんど問題ないのですが、ことシブイチに関してはちゃんとしたメーカー物を使って欲しいという事です。

3/8や1/2のラチェットは内部のギア機構とかもぶっちゃけ大雑把な造りでもなんとかなるのですが、シブイチはいわゆる精密工具でして、テキトーなモノを使うとまったく使い物にならないんですね。
たまにネット等で「シブイチってイマイチ使えないよね」とかの意見を見掛けますが大抵はちゃんとしたラチェットを使ってない事からくる使用感だったりします。
別に高級工具を買えとは言いませんが、シブイチに関しては出来るだけマトモな工具メーカーのモノを使ってもらってから判断して欲しいですね。

 

筆者オススメのシブイチはこれだ!

そしてもうひとつ。
これはもう私の独断と偏見バリバリな意見なんですけど。

シブイチは出来れば『ロングラチェット』を使ってみてください。

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これは個人的に使っているKo-kenの『1/4首振りロングラチェット』とエクステンション&8mmソケットの組み合わせです。

さきほどは「シブイチは8mmと10mmがど真ん中」と説明しましたが、これはあくまでもメーカー推奨のお話。
実はちょっと固く締まっている10mmだとシブイチのスタンダード長のラチェットでは厳しいんですね。

ちなみに厳しいのはラチェット本体ではなく『人間側』の話。
ちいさなラチェットハンドルで固く締まったネジを緩めてまわるのは握力や腕力的に結構大変なんですよ。
そこで『ロング』です、ラチェットの全長さえあればもう楽勝に作業出来ます。
もしこのコラムを見て興味湧いたって人は騙されたと思ってロングを買ってみてください。

そして私は首振りラチェットを使ってますが、これにも理由がありまして……。
回すのを楽にするためにロングを選択すると、今度はせっかくコンパクトに使えるラチェットに制限で出る場面があります。(グリップが部品に当たったりして回せないとかね)

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それもこの首振りロングならチョイと首振って逃げてあげればOKなんです。
ね?サイコーでしょ?

また写真のように少し長いエクステンションバーを常時つけておくのもオススメ。
ダートバイクっていじっていると結構ボルトナットが『少し奥』にある事があります、これも最初からエクステンションバーを付けておけば問題解決なんですね。
(イメージはTレンチの先みたいな感じ)

で、ここまで読んでもまだシブイチのメリットを感じずに「別に3/8でいいんじゃないの?」って思う人もいると思います。
そんな人はこれを見てください。

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これ同メーカーの同じサイズ(10mm)のソケットです。
左が3/8で右が1/4
同じ10mmなのにこれだけソケットサイズが違うんです。
もっというと根本の部分、ラチェットを差し込むところの太さを比べてみてください。
3/8は太くなっててソケットの先端にいくほど細くなってます、1/4は細くなってて先端は10mmに合わせた太さになってますね。

これってちょっと配線避けながら奥に差し込んで使う場合や、部品がボルトナットに隣接しているような場合にすごい違いになるんです。
確かにたった数ミリの違いかもしれませんが、この差が作業時にすんなり回せるか回せないかの大きな差になるんですね。

このコラム見てなるほど!って思ってくれた人はぜひ試してみてください。
ダートバイクにはシブイチ、すっげー相性いい工具ですよ。

 

ニブイチを忘れてもらっては困る ─ニブイチ編─

と、まぁここまで熱くダートバイクにおけるシブイチの良さを語りましたが。
実は結局1/2の大きめな工具も必要なんですわ。(全部っすね)

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ここでもう一回さっきの図を見てみましょう。

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まず、ダートバイクのアクスルナット。
27mmとか30mmとか32mmとかね、大きいサイズが出てきます。
これはもう図を見ればあきらかでして3/8の基本工具ではフォロー出来ないサイズなんですね。

では、仕方なくニブイチを揃えるのか?

否!

そうじゃないんです、楽しい作業するならば出来れば14mmとか17mmとかも揃えて欲しいんですね。
3/8差し込みの工具とかなりダブってしまう14mmや17mmを何故揃える必要があるのか?

答えは簡単でさっきから何度も言っている。

『工具とは人間が楽をするために使う道具』

そう!楽に作業するために持っているとチョー便利なんです。
一番分かりやすいのだとこんな作業。

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ダートバイクのリンクまわりです。
メーカーによって14mmだったり17mmだったりはしますが、ここの締め付けトルクが結構大きめでなおかつネジが固着しやすいんですね。
ここをフンガー!と3/8差し込みの工具で行ってもいいのですが、やっぱアレです、楽したいじゃないっすか。
その点、1/2差し込みの工具は大ぶりにつくられているのでちょっとの力で楽に作業出来ます。
すでにアクスルナット用に1/2差し込みの駆動工具を持っていればソケットを1個2個買い足すだけですからハードルも低いですしね。

さらに。

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1/2工具を使いたいような場面ってとにかくトルクが欲しいですから、出来ればこれも長いハンドルが欲しいんです。
でもでも、別にここはラチェットでカリカリと回せる必要がありませんから、こんな感じで『1/2スピンナーハンドル』を持っているだけでもOKだと思います。(安いし)

整備を長く続けていると『固くて緩まない』なんて場面に絶対に会いますので、こういう長くてドカンとトルクを掛ける事の出来る工具は持っていて損じゃないと思いますよ。

 

実は予算はそこそこでOK

で、ここまで読んでみて。
「なんだよ!すげー買い足ししなきゃなんねーじゃん」
って思ったアナタ。

いやいや、実はたいした事ないんですよ、個人的にオススメで例を挙げてみますね。

  • シブイチ:ロング首振りラチェットとエクステンション2本くらい、そしてソケットは8、10、12mmの3個(これで大体8~9千円)
  • ニブイチ:ロングスピンナーハンドルとアクスルナットサイズのソケット、そして追加ソケットは14、17、19、22、24mmの5個(これで大体8~9千円)

※どちらも工具メーカーKo-ken製の工具で見積もり。

ね、メーカー品でちゃんとしたモノを買ってもどちらも1万円はしないんですよ。
こんな感じで工具を揃えていくと整備スキルもきっと一段上な感じで作業出来ると思います。
別に今すぐ買え!ってな話ではなく、このコラムの話を頭の片隅に入れておいてもらって、実際の作業時で「あーなるほど、そういえばそんな事書いてあったなー」とか思い出してくれれば最高に嬉しいです。

みなさんメンテナンスは楽しんで、そして楽(ラク)してやりましょうー。

 

 自分のトコのWebサイトでも日々いろんな工具を更新しております。
ブログももうちょい専門的なの書いてますので見てやってください。
Webサイト:https://www.abit-tools.com/ 

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この記事の著者について

エイビット ヤマタク
エイビット ヤマタク
工具店をはじめて25年とちょっと。
自身もダートバイクを乗り回しております。
お店は東北道羽生ICから車で5分。
JNCCなどの会場にも出店参加してますよー。