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時に迷い、時にスコールに打たれ、時にマシントラブルが起き、時にこけて。
しかし苦しい思い以上に、素晴らしい経験をする。
時に大草原やジャングルを快走し、時に国籍を超えて仲間と道を探し当て、時にタイやカンボジアの人々の暮らしに触れ、とびっきりの笑顔に触れる。
そんな思いをしたくて、僕は自らコンペティターとしてAXCRに参加してきました。一方で、今回紹介したいのは「メディア」。そう、僕もメディアの人間なので、AXCRに毎年やってくるメディアの方々がどんな仕事をしているのか気になるのです。
そして毎年この人と行動していて、楽しませてくれる彼のことを、記事に書いてみたかったのです。
Photo/芳澤直樹
もうこの絵だけで、只者じゃない感ありますよね(笑)。バイクブロスから毎年メディア参加されている田中善介さん、通称ゼンさん。2015年から参加したゼンさんは、その後3年間AXCRへ僕と一緒にタイに渡り、独自の感性でレポートを書かれています。実は2014年もAXCRには絡んでおられたのですが、翌年から僕らは行動を共ににしてきました。もちろん、会社も立場も違うので、共同で仕事をするわけではないのですが、広大な大地を移動するラリーですから、一蓮托生的なところもありますよね。これはAXCRに関わる全員に言えることですが。ゼンさん、今は営業系のお仕事をされているけど、元々某誌の骨太の編集をされていた方だけに、仕事の捉え方や方法がまた面白いのです。
僕らコンペティターは前夜にロードブックを渡されて、翌日はそのマップ通りに走れることができれば「正解」なわけですが、メディアの場合は専用のロードブックを渡されるものの、「正解」なんてものがありません。一人ずつ車やバイクがあるわけではないので、海外メディアの方と乗り合い、限られた中でのベストを尽くす。時に運も味方させて。。。
前夜に打ち合わせをして、だいたいの目安をつけるのですが、ゼンさんのすごいところは、いわゆるギャラリーポイントやメジャーな撮影ポイントではなく、自分の足でAXCRならではの風景を捉える旅に出るのです。それも毎日。上の写真、一体どういう経緯で現地の方のサイドカー? で移動したのかわかりませんが、とにかく、説明のつかないタフガイです(笑)。写真を見て、「やるなあ!」と笑うしかありませんでした。
昨年は毎晩、「今日はどんなだった~?」ってお互い話しました。
だいたい10kmくらいは毎日歩いているようで、時に野犬に近づかれて睨まれたり、現地の人との楽しいコンタクトがあったりで、全く飽きのこない毎日らしいです。
事前情報も仕入れないし(時々悔しがったりしている 笑)、まさにジ オリジナル。ゼンさんの写真を拝見すると、「自分はこんな所を走っていたのか!」とか「ああ、そう、こんな風景があった」とか、思い出せるのです。
川渡りなど派手なアクションやシーンは、記事を作る側にとっても、参加者やギャラリーにとっても大事な場面ではあるけど、たとえばAXCRの代名詞とも言えるヴィレッジのクランク状の路地。農家の方が仕事をしているのを横目に見ながらの田園地帯の疾走。マップにも多く示される競技者にとって重要な目印となる小屋。そんなAXCRの日常にインプットされる風景が、ゼンさんの写真にはよく登場する。
だから、それらの写真を見るたびに、思考がアジアへ飛んで行きます。
まさにラリーを楽しみ、そして最高の絵を撮るために戦う男。
僕は毎日のLEGで、ゼンさんが「今日はどこでカメラを構えているのか」と、楽しみです。
「そこか~!」と驚かされることもしばしばありました。
これは全く気づきませんでした。穴の空いた橋を俯瞰で撮影されていたのです。僕は穴が怖いから、路面をガン見ですから(笑)。2016年AXCR LEG4より。
日頃は競合する会社に属して、お互い仕事に没頭していますが、毎年お盆の時期になると、共に、非日常の世界へ足を踏み込む。毎日違う世界を目の当たりにして、同じ宿に帰ってくる。苦楽を共にする、それはまさに戦友のようでもあります。もちろん、チームジャパンのサポーターとして帯同するハスクバーナ東名横浜の大崎店長も!
そして、ゼンさんだけでなく、たくさんのメディアのかたがAXCRには来られています。アジアのメディアも多いですが、日本からも大勢が渡航されます。
公式レポートで活躍されてきた河村大さんは、なんとダートスポーツ編集長の元同僚だったりします!
つまり四駆の世界で活躍されているのですが、昨年は二輪も含めた公式レポートを担当されていました。
また、2014年、初めて出会った高橋学カメラマンは、普段は4輪のお仕事をされていますから、毎年AXCRの時だけ出会うのですが、お互い違う世界にいるから、お互いの仕事が気になるんですね。僕は勝手に硬派カメラマンと思っているんですが、こんなお茶目なところもあります。アイスキャンデー食べてるし(笑)。
2014年ラリー前にお互い初顔合わせをして、高橋さんはラリーのことを(僕はラリーに関心はありましたが、いざ自分が出場し、誌面を作る上での知識が皆無でした)、僕は二輪のことをお話しました。それは面白い打ち合わせでした。AXCRはWRC系のラリーから派生しているんだとか、色々学ばせていただきました。あっという間にそれから4年が経とうとしています。そして出発の地で一年ぶりに彼らと再会します。僕の走りは自分でもわかっていますが、地味なので、現場で気づきにくいそうです。
毎年動画を撮影していただいるクルーや、海外から参加されるフレッド、そしてもちろんアジア各国からの大勢のメディアのみなさんが、AXCRの魅力を伝えてくれています。
概して4輪メディアの方は、僕ら2輪コンペティターの活動や世界観が面白いみたいです。ナビも運転も整備も全部自分でやるMOTOラリー選手は、独特のバイタリティがあるのかもしれません。
メディアでありながら、完全にコンペティター(SS途中でカメラを持ち出して撮影していますが)の僕が、毎晩レポートを書いているのも驚かれました。今ではもう恒例となっていますね。
そんな中で、僕ができることは、やはり泥と砂と水にまみれ、SSを突っ走り、ビレッジで人々の営みを感じ、時に道に迷い、時に人を助け、助けられ、スコールに打たれ、優しさに感謝し、蓄積されていく心地良い疲労感や、美味な食べ物を楽しみ、翌日のマップの準備をする。そんなコンペティターが味わう一切のものを、表現することなのだと思います。
ラリーはメディアもコンペティターも主催者も、みんなで国境をこえてゴールを目指す。国籍や年齢や性別も関係なく、目指すものがある。
目指せ、プノンペン。
チャレンジの日がだんだんと近づいてきました。
この記事の著者について
- キース宮崎
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