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本日は成田モトクロスパークで2016モデル オフロードバイク大試乗会 in 成田モトクロスパークが開催されました。
各車の特徴を比較試乗できるということで、私、宮崎も参加してまいりました。

試乗インプレッションというのは、とても面白いもので、自分と他のライダーの感じ方が真逆というのも当然あるし、自分自身の印象も午前と午後で違ってくる、なんてこともあります。

オフロードは路面コンディションも変わり、また体力を消耗するスポーツですから、スタート〜3周くらいの体力に余裕があるときと、疲れたときの、それぞれの「良い印象のバイク」が変わってくることがあります。

今日一日の試乗を終えて、エンデューロ仲間達とインプレ談義しているなかでも、「これがベスト!」というのがなかなか出しにくいのも面白い面です。
「こういうときは●●がいい」「でもサスペンションだけなら●●がいい」というように、「良い/悪い」「好き/嫌い」という感覚がありません。それだけ、このエンデューロマシンというカテゴリーが複雑なものであるということと、成熟してきている証拠だと思います。陳腐な言い方をすれば、今日乗ったマシンで「これはどうも苦手、、、」というマシンが一台もありませんでした。

自分がどんな風に走りたいか。どんなレースに使いたいか。そういうものを吟味してマシン選びをできる、とても贅沢で恵まれた環境であると思います。

今日は、終日快晴で100名近くが参加という大盛況でした。
久々の成田MXパーク、MXコースも路面コンディションが良くて楽しく乗れました。所々に出来ているギャップで、各車のサスペンションの追従性の違いが明確に現れていました。

以前乗ったときよりも
好印象になったYZ450FX

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さて、まず試乗したのは

YAMAHA YZ125(近藤香織選手仕様)

かつて本誌でもセッティングノウハウやインプレッションを掲載した、鈴木健二氏によるYZ125チューン版の進化タイプ。あのYZ125よりも、さらにマイルドで扱いやすくなっています。

ガスケットを1枚追加して圧縮比を下げているのに加えて、排気バルブタイミングも変更。かなりマイルドで、2ストロークのピーキーさは皆無でした。短い周回しかしていませんが、長時間走行してもまったく疲れないことが容易に想像できます。
サスペンションはテクニクスによるリバルビング済みで、鈴木健二さん車にも共通する柔らかめの、吸収性が素晴らしい仕様。この近藤車は私には少し柔らかすぎる面もありますが、車体の沈み込みによる足着き性の良さなど、難易度の高いマウンテンコースなどでは、快適に走れそうです。

ちなみにエンデューロトップレディスの一人、姫丸さんは、「レースで使うなら、もうこのままで参戦できてしまう。サスセッティングは不要」というほど、しっくりきていたようです。

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YZ250FX

サスペンション、エンジンマップともスタンダードで試乗。今日は他の海外メーカー製との違いを強く感じました。モトクロッサーベースであることで、ポジションやサスペンションフィーリングが、やはりモトクロッサーの兄弟車なのだなと感じました。これは悪い意味でも良い意味でもなく、特徴として。

このマシンは午前と午後2回乗りました。午前は、またがった瞬間、少し重さを感じたのですが、これは後で思うにエンジンのマイルドな特性がそう感じさせたのかもしれません。かつて私はCRF250Xでエンデューロ参戦していましたが、それと直接並べるのは無理がありますが、やはり他の海外メーカー車に比べると、感覚はそれに近いものがあります。

ハスクバーナFE250の直後に乗ったため、その違いが明確でした。ハスクバーナ(KTMも)はハンドリングが軽快で(2016モデルは直進安定性も向上したと思います)すが、YZ250FXは、ややハンドリングが安定志向かな。左右の取り回しもゆったりしていますので、安定感重視に感じました。

マディやテクニカルなウッズで乗ったことがないのですが、今日のようなモトクロスコースではまったく不満なく楽しめる一台でした。

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YZ450FX

今日の試乗会で最もパワフル、元気なエンジンを搭載したモデルでした。
SUGOのメディア試乗会では、そのパワーに少しビビリが入っていたのですが、改めて乗ると、なかなか好感触です。モトクロスコースだったからというのもありますが、ストレートでアクセルを開けるだけでフロントが浮いてくるので、楽しいですし、ギャップを簡単に越えてくれるのです。

これは使いようによっては、YZ250FXよりも楽できて、しかも「軽く」感じるかもしれません。爺ヶ岳のレース後半の荒れたゲレンデ登りなどは、このマシンが最強かもしれませんね。

では低速がないかというと、開け口からスムーズなので、唐突感はありませんし、十分コントロール下におけます。

今日はスタンダードマッピングでの試乗でしたから、YZパワーチューナーでマイルドにふってあげれば、イメージはさらに違っていたでしょう。

私のエンデューロ仲間の一人は、「KTM、ハスクバーナのWPよりも、むしろギャップでの安定性が高く感じた」という人もいたのが興味深かったです。

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YZ250X

2ストローク250ccは、私のような中級者にとっても、大変便利な乗り物です。2速くらいで半クラッチを使っていけば、どんな坂でもトコトコ粘りながら登ってしまいます。ライバル車にBetaやハスクバーナなど、エンデューロ専用モデルがありますから、比較試乗という意味では、ややシビアに見てしまう面もあります。
たとえばセルが欲しい、エンスト寸前の粘りが、海外車よりも少ない等。

しかし軽くてコンパクト、低速も扱いやすいので、私くらいのレベルのライダーなら手軽にレースに出れそうです。旋回性もヤマハ車らしく高いです。モトクロッサー特有の鋭い旋回が可能ですし、車体そのものが自然舵角性能を引き出せているからこそ、ラインなりや、少しタイトにとか、色々なコーナリングが試せるのだと思います。フレーム剛性は、海外車よりもやはり高めに感じます。気になったのは振動の多さ。もう一回くらい走って確かめたいところですが。

でもこのマシンのベースがYZ250だと考えたら、この造り込みは半端じゃありませんね! 2ストローク250ccモトクロッサーなんて、おそらく怖くて乗れませんから。

ライン取りの高さに注目

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HUSQVARNA FE250

先日のハスキーオフロードフェス(日光)で試乗しましたが、今日はさらに乗りやすさを感じました。TE250同様にソフトスプリングに変更し、伸び側減衰を標準から3クリック戻しというのが、ハスクバーナモーターサイクルズジャパン試乗車のセット。これが絶妙に良いのです。

WPのフロントサスペションの完成度の高さを感じます。
相当なギャップに何も考えずに突っ込んでいっても、外乱を感じません。なにごともなく通過してしまうという、もはや驚異の「サボリ」バイクです(笑)。

車体はBetaやシェルコに比べると、昔からKTMやハスクバーナは決して小さくは感じません。ですが、走り出してみるとその大きさは気にならず、ただシートに乗っかってハンドルを握ってアクセルを開けていれば、前に進むような安心感があります。KTMの250EXC-Fよりも、リンクが装備されている分、ギャップの跳ね上がりもなく、クッション性も高い気がします。クイックに走るのは250EXC-Fかな。

HUSQVARNA TE250

昨年TE250に乗っていましたが、相当印象が変わりました。まずハンドリングが圧倒的に安定しました。これはフロントアクスル径が細くなったことが要因として大きいと、石井正美氏から聞きました。KTMともども、少しキャスターが立ったような感覚があり、ウッズの細かいエリアでの切り回しの良さとは別に、安定感に欠けるように感じる面もあったのですが、2016はそれがなくなっています。

思うようにラインを選べ、インもアウトも自在。それはハスキーオフロードフェス初日のマディでも痛烈に感じました。
今日はドライでしたが、マディでのライン取りの自由度の高さは、即成績などにつながると思うので、かなり高いポイントだと思います。

エンジンの低速は文句なし。試しにアクセルを閉じてエンストぎりぎりまで粘ってみても、なかなかエンストしないのです。超極低速の粘りは、ライダーを助けてくれます。初心者でも2速の粘りを覚えれば、マウンテンコースを周回できるはずです(事実、日光ではオフロード初めての方3名を先導しましたが、感動されてました)。

一番気に入ったマシン

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Beta RR2T250

冒頭にも書いたように「一番気に入ったマシン」というのがなかなか決めにくいのですが、2ストロークならこのRR2T250が最も気に入った一台です。取材などで過去にも乗らせていただいていますが、その評価はまったく崩れません。

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まず特筆したいのは、下半身(特にくるぶし)ホールド性の高さ。何も意識せず着座しただけで、ピタッと吸い付くようにホールドできます。ステップが逆「ハ」の字になっているのでしょうか? また左右ステップ感も少しタイトで、足が開きすぎる気配がない。このことにより、自然に下半身乗りが可能になり、結果上半身が軽快に動きます。コントロールしやすいということです。

これ、試乗後、トライアルIBライダー、大神君と話していたんですが、彼もまったく同じ印象を持っていたようです。

そしてその影響や、ハンドルとステップの位置関係によるものか、なにしろスタンディングがしやすいのです。私、某大臣以上に座るのが好き(笑)な、スタンディングまったくできないライダーなのですが、このマシンだけはスタンディングがめちゃくちゃしやすいです。ハンドルバーが格段起きているわけでもありません。

ベータモータージャパン門永代表によれば、ステップ取り付け形状は気にしたことがないですが(日頃これで馴れているので)、スタンディングのしやすさは、お客様からは高評価を受けているそうです。

エンジンは文句なし。扱いやすい。ハンドルバーも割と短いので好みでもあります。分離給油システムも、利便性が高くていいですね。

Beta RR2T300R

300になるととたんに、エンジンが元気になりますね。少しじゃじゃ馬的な感覚というか、自分が怖くない程度に開けておかないと、置いて行かれそうな感覚があります。
250との差が大きいのも面白いですね。門永さんは、300のほうが楽ができると言います。これは山のコースに行くと分かるのかもしれませんね。私はまだMXコースと平原コースしか走っていないので、250に比べると、評価は低いのですが、別のシチュエーションで走ってみたいです。

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Beta X trainer 300

先日CGCなみあいのオールスターを取材しにいきましたが、トライアルスーパーIAの小川毅士選手が軽くて扱いやすいとコメントされていました。事実、初のハードエンデューロで3位に入っていますから、エクストリームな場面では最強でしょう。

私自身はサスペンションの柔らかさやバックステップなど、乗り馴れていない要素もあるので、必ずしも扱いやすいとは感じないのですが、ハンドル切れ角の多さには驚きでした。試しにフルロックターンでクルクル回ってみましたが、小さい円を描くことが可能。MXコースではわざと超インを回ってみましたが、他のバイクよりも遥かに細かい切り返しが可能です。

やはりこのバイクはエクストリームなシチュエーションにもっていって試したいですね。

抜群の追従性と粘り

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KX250FSE

本誌でも試乗取材したピュアテックによるKX250Fのエンデューロチューン車です。このバイクのファーストインプレはかなり良いものでした。
もともとバランスの良いKX250Fの良さをそのままに、サスペンションチューン、マッピングをマイルドにしているのですから、軽くて乗りやすい。

今日はMXコースのみでしたから、当然モトクロッサーの良さがでていて、軽快。ワダチなどの外乱に強いアルミフレームと、サスペンションが安心して攻めることをうながしてくれます。

先日はワダチの連続する左右切り返しのウッズの上りで、抜群の追従性と粘りを堪能できました。下りギャップもしっかり吸収します。

サスペンションは長丁場のレースではもう少し柔らかいほうが良い気もしますが、ファンライドやサーキットレースではこのままで十分かも。

カプラーによるマッピング変更が可能ですが、私はマイルドよりも標準が好みです。モトクロッサーの軽快感と走破性を活かすセッティングではないかと思うからです。セルがなくても、エンストしにくいので安心感もあります。

おなじみENDURO.Jも、「ベストはKX250FSE!」と話していました。

タイムを出すためのバイク

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tm250FI-EN
10年目を迎えたアルミフレームもさらに熟成されたというtm。このフレーム特有の剛性感の高さが、今回のマシン群の中では異色で、独特の良さを感じました。
楽をするためのバイクではなく、攻めるためのバイク。タイムを出すためのバイクがtm。フレームが固すぎるような印象はまったくありませんし、少し起きたセットのハンドルバーを握って走行していると、自然に攻めたくなります。
特有のポジションですが、これはこれでいいですね。

実は昨日、本誌用インプレッション取材を同じ成田MXパークでおこなっていたのですが、今日はサスペンション減衰をやや柔らかめにしたとのこと。それもあり、路面追従性も高く感じ、全体的な剛性バランスが高まったようにも感じます。

燃料タンクレイアウトは昨年モデルからシート中央下辺りに変更され、マスの集中化が、軽快感として感じることができます。サスペンションは今年からKYBが主体。うえさか貿易の上坂さんによると「昨年までの主流だったマルゾッキに比べるとKYBは好みではなかったが、今年はリンク角、フレーム変更でKYBの良さを引き出すことに成功している」とのこと。マップは手元のスイッチで2種類選べて、私は断然「2」の低速寄りが好みでした。

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t m 144 EN
125のボアアップエンジンではなく、専用エンジンという144。10年目を迎える144ですが、2016はシリンダー、ピストン共に刷新。軽快に吹け上がるエンジンフィーリングは、快感の一言です。ピーキーさがないので、2周目からすぐに慣れることができました。ずっと乗っていたくなるほど、楽しいマシンです。

エンジンフィーリングの良さは、2012から採用の電子制御式パワーバルブや、1、2速のみ適用するシフトポジションセンサーによって、扱いやすさを出しているのでしょう。

タイヤはチェコのミタス。初めて乗りましたが、今日のドライコンディションではまったく問題なし。いずれにしても滅多に乗れないt mに乗れたのは満足でした。

「いい意味で」なんの特徴も無し!

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KTM 250EXC-F

試乗を終えてKTMジャパンスタッフに開口一番「何の特徴もありません(笑)」。

これは私なりの褒め言葉であり、クセや個性が感じられないほど、完成度が高いということなのだと思いました。

柔らかいシートに座り、前述の超優しいフィーリングのWPサスペンションに身を委ねれば、もう何もせず前に進み、加速し、坂を上り、下れます。

4スト250ccエンデューロバイクのスタンダード(クロスカントリーのWR250Fとはコンセプトが違っていた)として進化し続け、この完成度まで持っていったKTM。
先日の本誌取材でもBONSAI MOTO多川氏やIAワタライの評価も高かった250EXC-F。
もはや何の不満もありません。強いていえば、リンクレスのためギャップ跳ね上がりに神経がいきますが、実際にはキックバックのようなことは感じませんでした。登り坂での前に突き進む感覚は、リンクレスならではの特権でもあると思います。先日のSUGO2デイズエンデューロのルートで、IA、IBのみが走るワダチの急な登り坂を経験しましたが、おそらくすさまじい加速とトラクションで登ったでしょうから、ライダーが置いていかれないように、段付きシートや、カバーに滑り止め加工が必要かもしれませんね。

一言でいえば「ザ・スタンダード」です。

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KTM 350EXC-F

何度かIAカズトのマシンに乗って感じていますが、このマシンの最大の魅力はエンジンフィーリングです。もう独特なんですね。350でしか出せない力強く、低速も粘るトルク感があります。YZ450FXと比べても、トルクが太いというか、ウッズの上りに強そうな感覚です。エンストもしにくいですね。

数年前のマディの8時間パワーエンデューロ(モトパーク森)の参戦を思い出しました。深いワダチの上りを、グイグイと登っていく力強さ。エンジンとリンクレスのコンビネーションは、実戦ではすさまじいものがあるでしょうね。

とにかく軽い! コンパクト!

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SHERCO SEF-R 4STOROKE-250

4ストロークで最も気に入ったのは、シェルコでした。とにかく軽い! コンパクト! そのうえでエンジンが扱いやすい! そしてWPサスペンションの吸収性が高くて、言うことなしです。
驚異的に小さく感じるのは、エンジンマウント位置の低さによるものなのでしょうか。それもありますが、実際ハンドルを握ったときのポジションも抜群で、実にコントロール下においている印象があります。

ベータとシェルコ、トライアルマシンメーカーならではの特徴が、この2社にあるのは間違いありません。

シェルコは思い返してみても、いつでも驚異的な軽くてコンパクトなマシンを生み出してきました。2ストロークは、スリッピーな勝沼で最強でした。4ストロークはかつては軽すぎて安定感がないかもと思うくらいでしたが、WPになり、熟成されて完成度が驚異的に高まりました。この4ストロークとWPのマッチングは抜群だと思います。

このマシンに乗って参戦中のアグイさんも、「とにかく楽ができるヨ」と太鼓判を押しています。文句無しの一台ですね。

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最後に、エンデューロ仲間、O竹さんのご好意に甘えて、自前の2015年型シェルコSEF-Rに乗らせていただきました。こちらはフリー走行枠なのでエンデューロコースにも突入。森の中はワダチがあり、コーナーはタイト。初めて走るコースでしたが、シェルコのバランスの良さと軽快性に助けられて、楽に走ることができました。

エンジンマップは2016で、より低速にふったようです。ということで、2015は今年の日高など、相当にキツイ場面では最後の最後でエンストしてしまうことがあったようですが、全体的にはとても良い印象。実は私、閉鎖直前のデコボコランドでO竹さんに乗らせていただいたのですが、そのときの感動が忘れられませんでした。エンジン性能が完全に自分好みであること。ハード路面のギャップをなにごともなく通過させてくれるWPサスペンション。

絶妙なポジションでシッティングもスタンディングも楽。

今日もやはり、とても良い印象で試乗を終えたのでした。

以上、駆け足で乗ったので、細かい所まで言及できていませんが、パッと感じた印象でした。

今後もこの試乗会が続くことを期待しますし、ぜひ皆さんも乗ってみていただきたいと思います。

モトクロスライダーの方にも参加していただければ、最新のエンデューロマシンのポテンシャルの高さを実感していただけると思います。

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